異物

僕はスナックなのかラウンジなのか分からない、

それらの間のグレーゾーンに位置する店でバイトしてまして、

どんなお店のか特長を一言で言い表しなさい、と言われたら

「歌が上手い歌好きの年寄りが集まる店」である。

(注：あくまでも、愛を込めての「年寄り」です)

年寄りが歌うのは

案の定、演歌だ。

50歩譲って歌謡曲。25歩譲って演歌歌謡。

カラオケの時

自分が何を歌いたいのか、何が歌えるのか、普段何歌ってったっけ？

と、忘れたかのように出て来ない事、ってよくありますよね。

勿論、僕の店もそうで、

というか

年寄り達だから、なおさらである。

そんな時に助けてくれるのが、モニターに映し出される「当店ランキング」。

演歌、歌謡曲なりの《定番》《盛り上がる歌》《エエ歌》というのが勿論あって

そういう歌がランキングに上がり、曲選びがスムーズに進むのである。

当店ランキングはこんな感じです。

五木ひろし『別れのブルース』

吉幾三『酒よ』

舟木一夫『高校三年生』

ももいろクローバー『行くぜ！怪盗少女』

香西かおり『酒のやど』

miwa『ミラクル』

テレサ・テン『空港』

石原裕次郎・牧村旬子『銀座の恋の物語』

SPEED『my graduation』

明らかに異質な歌が約３曲。店に一人の時に練習した曲で、

練習し過ぎてランキングに上がってしまいました。


先日


そのランキングを見た客、ママ達が「ん？」と時間が一瞬止まり、

次の瞬間ママと目が合いそうになったので


僕は目を逸らしました。