「何でないのんや!」
先日、梅田の大型書店で物色していたら
後ろからお年寄りの怒声が聞こえてきた。
さて、この、本屋だけに《ほんの》5分ほどの短い間に起こった出来事を書こうと思っているのですが、
別にオチとかないので、それでも構わなければこのまま読んで頂いても良いですし、
気に入らなければ、今すぐ立ち去って貰っても構いません。
まず、一つ目の問題は、この話の主人公の「お年寄り」をどう書くか、
であるが、「お年寄り」と書くと角が立つかもしれない。
「年寄り」はもっと角が立つ。「老人」「御老人」もアレなので
ここは仮で「ゲンジ」と名前を付けたいと思います。呼び捨てでいきたいと思います。
背中で聞いていると、
【欲しい本が探してもないから店員さんに探してもらっていて、その店員さんも他の店員さんに応援を頼んで探しているけど見つからない】
、というのが事情のようです。
人のお怒声ほど嫌なものはない。
ほんとに嫌になる。
まじで。
ましてや僕が本屋に居るって事はつまり僕にも気になる本があるわけで、
さらに当の、その本が目の前の棚に並んでいるのだから、
怒声が嫌で移動する訳にもいかず、我慢して目の前の本に集中しよう!と決意しましたが、
まぁ、無理です。
振り向くと
ゲンジは着物姿でハットを被り、巾着も下げ、杖をついていて、
身なりはすごく整っている。
そのゲンジが、
フロアの中程に位置する、店員さん的「奥」となる部屋に向かって怒鳴っているのである。
入り口のカーテンが「ここから入らないでね」と言っている。
カーテンには従う従順さと、
さっきから怒声を発している威勢が
ゲンジの中で矛盾している事に本人は気づいていないだろう。
欲しい本が見つからないのと、カーテン越しというので
ゲンジはの苛立ちも増してきたのか怒声もだんだん大きくなってきて、
本に集中したい僕は、本に集中しているゲンジに集中する他ない状態である。
「結局ないんかいな!」
「どないや!」
「なんでないのんや?」
何の本を探しているのか知らないが、結局在庫がないのか
店員さんも
「大変申し訳ないのですが、当店ではお取り扱いしてないようで…」
と誠意を見せて謝っているが、
「ないことないやろ!」と大声で食いさがるもんだから
店員さんも
「他の店舗の在庫も確認しているのですが、どうやら扱ってないようでして…」
と平謝りするしかない。
ゲンジは
「※※書店が扱ってない訳がないがな!」
無いのに探せ、というのは店員さん的にキツいと思うが、
その本がたまらなく欲しくて、((※※書店に行けばきっとあるだろう))とわざわざ足を運んだゲンジの気持ちも判る。
筆者も本が好きで、同じような気持ちで探し歩くこともあるからである。
欲しい本を探す時の「希望」は、甘美で、光り輝いている。
※※書店に足を運ぶのも《わざわざ》ではないのである。
肉体がまったく疲労を覚えないのである。
恍惚状態と言っていい。
しかし、【そこにあると確信して行ったけど、そこには無い。】となると
結果が変わってくる。
すべての行動に《わざわざ》という副詞がつくのである。
《わざわざ》というのも、本屋にとったら「知らんがな」ってハナシなんですけどね。
無いものは無いんですから。
さて、相変わらず、ゲンジは
「※※書店に置いてない訳あらへんがな」
の一点張りである。
「キミはあれか、中央公論って知ってるか?」
「は、はい」
「中央公論を置いてないのと一緒やで」
と、比喩を持ち出してきた。
しかし、無いもんは無いのである。
さすがに、ゲンジもしびれを切らしたのか、というか思い知ったのか、飲み込めたのか
「くっ。」
っていう、観念し、ツバを飲み込んだ微かな喉声を僕だけが聴いたような気がした。
「もうええ!」
と、威勢だけをそこに置き残して、杖をついて店を後にするゲンジはなんか可哀想でした。
誰も悪くなない。
僕も神聖なる本屋で怒声を吐くジジィと最初は憎んだものだが、、、。
願わくば
ゲンジが求めていた本がもっと頑張って※※書店に置かれるのを祈ることしか、僕に出来る事はない。
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日本夢之助
(1)よしもと漫才劇場に出るためのオーディション
『UP TO YOU』
3月4日(金) 19時45分開場/20時開演
場所・中崎町 BSQUARE(大阪市営地下鉄谷町線「中崎町駅」下車、3番出口あがったところのビルの地下1階です)
料金・500円
(2)よしもと漫才劇場に出るためのオーディション
『UP TO YOU』
3月14日(月) 19時45分開場/20時開演
場所・中崎町 BSQUARE(大阪市営地下鉄谷町線「中崎町駅」下車、3番出口あがったところのビルの地下1階です)
料金・500円
手売りチケット/手売られチケット、ありますん!><
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